義姉の出産


 義姉の奈緒美さんが産気づいたのは、畑で一緒に草刈りをしていた時だ。
「コーちゃん、悪いけど人を呼んできてくれるかな」
 突然大きなお腹を押さえてしゃがみ込んだ奈緒美さんを前に、中学に上がって間もない僕はオロオロするばかりだった。
 兄嫁の奈緒美さんは二十二歳。
 年の離れた兄さんは都会の町に単身赴任中で、週末にしか戻ってこられない。
「ど、どうしたの」
「……う、産まれそう……」
 奈緒美さんは額に汗をかいて辛そうだった。
「すぐ誰か呼んでくるから!」
 そして僕は母屋まで息が上がるのも構わずに走った。
「奈緒美さんが! 奈緒美さんが!」
「浩介、どうしたか」
 出てきたババに事情を説明すると、「ほう、ほう」と落ち着いたものだった。
「なに、心配いらね。浩介、雨戸を持って隣のタダシと畑に戻れ。奈緒美さんを乗せてソロソロ運んでこい。泡食って落とすなよ。ワシは産婆に連絡するでな」
「わ、分かった!」
 雨戸をがたがた外していると、「おぅい、ありったけのヤカン出して湯を沸かせ。産まれるぞ」とババの声が聞こえた。


 僕は言われた通りに隣家に向かい、昼寝中のタダシを叩き起こして奈緒美さんを迎えに走った。
 さすがは田舎。情報が早い。
 うんうん唸る奈緒美さんを雨戸に寝かせ、一五分ほどかけて戻ってきた時には、家の中はご近所さんまで駆けつけて賑わっていた。
 出産祭りの始まりだ。
「こっち、こっち」
 仏間から産婆さんが顔を覗かせた。
 うちのババの年代でとっくに引退しているんだけど、顔馴染みに頼まれた時だけ引き受けているみたいだ。
 それにしても僕たちより早いとは。
「ここに寝かせてくれ。そっとだぞ」
 畳の上に広げられたシートの上に布団が敷いてあって、周りに大量のタオルが積まれているのが見えた。
 この仏間は、僕が生まれた部屋でもある ―― らしい。
「よし、脱がすぞ。手伝え」
 産婆さんがマグロみたいに横たわった奈緒美さんの、もんぺの紐を手早くほどいた。
「ほい、腰を持ち上げろ。いち、にい、さん!」
 言われるままにタダシと一緒に奈緒美さんの身体を浮かせる。
 ずるっ。
 一気にもんぺが下着ごと引きずり下ろされ、もやっと黒い恥毛が目の前に現れた。
 仏間は母屋の一番奥に位置していて、昼間でもぼんやり薄暗い。
 その中で剥き出しにされた女性の下半身は、ドキリとするほど白くて淫靡だった。
 背徳感に、思わず周りを見回してしまう。
 タダシも顔を赤くして、奈緒美さんのデルタ地帯をちらちら見ていた。
 奈緒美さんの恥毛はあまり量がない。
 陰りの下にワレメが透けて見えるくらいの感じ。
「あうぅぅぅ」
 奈緒美さんが膝に絡まるもんぺや下着を、邪魔だと言わんばかりに太腿をもがかせた。
 ムッチリと色っぽい太腿のお肉が波打つ。
 そして股の奥にくっきりと覗くワレメ。
 僕もタダシも動きが止まってしまう。
「ほら、ゆっくり見てる暇はねぇだぞ」
 産婆さんがもんぺと下着を抜き取って、白い靴下を残して下半身を裸にした。
 それから、人の背丈ほどの棒を奈緒美さんの膝裏に当て、片方をベルトで縛った。
「そっちの脚を引っ張ってくれ。股を開かせるぞ。そうれ!」
 これでもかと股を広げられ、もう片方の脚もベルトで固定される奈緒美さん。
 脚が閉じないようにするためだとは分かるけど……
 股の奥に覗いていたワレメが、あっという間にワレメではなくなった。
 僕はワレメの中身のグニグニした器官が露出する様子を、目の前で見てしまった。
 中学生の身には衝撃的すぎる光景だ。
 剥き出しの女性器から目が離せない。
 それはタダシのやつも同じだった。
 パックリと開いたワレメの中に見えるのは、貝の舌みたいな小陰唇。
 同じくらい目立つのは、肉色の鼻筋状の盛り上がり。
 小指の先よりもっと小さな突起が、ぽつんと頭を出している。
 その突起に『クリトリス』という呼び名がついていることを知ったのは、割と最近のことだった。
「どんなもんじゃな」
 産婆さんが僕の目の前で奈緒美さんの膣穴に指を二本突っ込んだ。
 指が付け根まで易々と潜るのを見て、僕は女の人のそこが穴なのだと納得できた。
 奈緒美さんは恥ずかしがる余裕なんかないらしく、されるがままでうんうん唸っている。
 足元から見ると、お相撲さんみたいなお腹に遮られて顔は見えなかった。
「浩介、乳出してやれ」
 産婆さんが言った。
「え?」
「乳だ乳。上着めくって乳当て外してやれ」
「わ、分かった」
 たぶん締め付けを緩めるためだろう。
 産婆さんの言うとおりにしていれば間違いない。
 僕は奈緒美さんの乳房をはだけにかかった。
「浩介、グスグスするな」
「だ、だって」
 なかなかブラジャーの外し方が分からなかった。
 正面裏側のホックを見つけるのに暫くかかったと思う。
「よし……」
 奈緒美さんは胸が大きい。
 Gカップだとか言っていた記憶がある。
 そのボリュームたっぷりの乳房がゆさりとこぼれ出て揺れる様子は圧巻だった。
 まるで軟体動物だ。
 胸の上で横に広がって心持ち脇に垂れ、奈緒美さんの呼吸に合わせてゆっくり揺れる。
 去年一緒に風呂に入った際に見た時よりも、乳輪が大きくなっている気がした。
 産婆さんが乳首を引っ張って「大丈夫そうだな」とつぶやいた。
「はぁ、はぁ」
 奈緒美さんは呼吸も荒く、僕に乳房を出されたことにも気付いていない様子だった。


「浩介。すまんが新しい剃刀をもらってきてくれんかの。このナマクラじゃうまく剃れんわい」
 息つく間もなく次の用事だ。
「剃刀?」
「そうじゃ。下の毛を剃るやつじゃと言えば通じる」
「わ、分かった」
 仏間を出る時に振り返ると、奈緒美さんは恥毛を右半分だけ剃り落とされた状態だった。
 産婆さんがワレメの中の『グニグニ』を指先で寄せて押さえたまま、「早う行け」とあごをしゃくる。
「ほう、ほう」
 僕と入れ替わりに、ババとご近所さんたちが入ってきた。
「どんな調子だ」
「この分なら安産じゃろ」
 もう一度振り返ると、みんなで奈緒美さんの股を覗き込みながら、ワイワイと楽しそうだった。
「浩介には早いわよ。あたしが持って行く」
 新しい剃刀をもらったのはいいけど、高校生の姉ちゃんに役割を取られてしまった。
 ほっとしたような、残念なような。
 タダシもやがて居心地が悪くなったようで、仏間から逃れてきた。
「みんなは?」
「いるよ。お茶飲んで世間話してる」
「そっか」
「奈緒美さん、失禁してたぞ」
「そ、そうなんだ」
「ああ。尿瓶当てられて……」
 タダシが僕の耳元に口を寄せ、「股のお豆みたいなところ弄られて無理矢理出されてた」とささやいた。
「な、なるほど。女の人って大変だな」
「ああ」
 オチンチンがムズムズした。


 やがて仏間の方から、唸るような悲鳴のような声が聞こえてきた。
「あ〜あ〜あ〜」とか「ううあ〜ひぃぃ」とか。
 奈緒美さんがあんな声を出すのだと思うと、妙な気持ちだった。
 気になるけど、見に行く勇気が出ない。
 血がたくさん出ると聞いたことがあるから。
 正直言って怖かった。
 それから細々した物の買い出しを命じられ、戻ると母さんが兄さんと連絡がついたと喜んでいた。
 朝一番の列車で帰ってくるそうだ。
 姉ちゃんが仏間から出てきて隣に座り、複雑な顔でせんべいをかじった。
「どうしたのさ」
「いや、あたしもいずれはああやって赤ん坊を産むのかなって」
 姉ちゃんは何か思うところがあるようだった。
 大体想像はつくけど。
「嫌なら町の病院で産めばいいっしょ」
「何言ってるのよ。あたしはこの村の娘なの。そんな根性なししたら笑われちゃう」
「そういうものかなぁ」
「男には分からないわ」
 それから姉ちゃんは「よし」と立ち上がり、戻っていった。


 日付が変わろうとする頃、母さんと姉ちゃんがタライにぬるま湯を準備した。
 うなり声に代わって赤ん坊の泣き声が聞こえたのは、その少し後だ。
 ほっと胸をなで下ろす。
 僕は家中の空気が明るくなるのを感じた。


top